良かった。

仕事を終え、昼休憩ぶりにiPhoneの電源を入れる。友人からLINEが来ていた。ああ、そうだ、今日は水曜日だ。曜日感覚がない。


電車に乗る。第一次帰宅ラッシュを過ぎたからか疎らに席は空いている。一番端に座った。落ち着く。右の壁に凭れかかる。


一番に読みたい気持ちを抑えて、上から順番に読んでいく。


0時になった瞬間、メンバーに祝われたことを知る。良かった。彼のいないところで、彼の話題が出て、彼の心配をしてくれるひとがいる。周りに安心できるオトナがいる。良かった。愛してくれるメンバーがいる。良かった。20歳の誕生日を迎えてからまだ4日。「相方」とふたりでごはんに行ったことを知る。良かった。知る限り今年の誕生日を迎えるのをいちばん楽しみにしてくれてたひと。良かった。


最後のページを開く。読む。心臓が、血管が、脳が、全身がドクドクいう。苦しくなった。


良かった。
すきになってから今日まで、一瞬も間違ってなかった。


わたしはアイドルは嘘をつく生き物だと思っている。語弊があるかもしれないけど、嘘をついて、うまく嘘をついて、ファンはそれに夢見て、酔って、全部わかった上ですきでいると思っている。少なくてもわたしはそうだ。捻くれていると思われてもいい。だから、何か厚く塗り固められた鎧のようなものをアイドルはみんな纏っていると思っている。でも、ずっとそう思っていたのに、彼の言葉とか、仕草とか、行動とかがその考えを覆してくる。信じたくなる。ひとつひとつの言葉から滲み出るその人間性を。間違っていない、ありのままの姿を。


年下・最年少というポジションはすごく柔らかくて、温かいところだと思う。それは間違い無いんだけど、わたしはそのポジションに留まってほしくなかった。もっと自分の意見を言えばいいのに、とかもっと自分の言葉で話せばいいのに、とか、何度も何度も思った。口数は多いのに自分のことを話さない。でも、きっと自分でそれを理解しているし、甘え上手だけれど、何かを悟られた上で甘やかされたくないのだと思う。彼の周りにはたくさんのひとがいるのに、時に独りで何度も抱え込んだり塞ぎ込んだりしたこともあると思う。不器用だ。あんなに明るく見えるのに。でも、その経験をバネにして前に進んでいる。突き進んでいる。見習わなくてはならないところが山ほどある。気づかされることもたくさんある。


不器用な彼が紡いだ言葉。あたたかくて、やさしくて、すごく愛しい。


良かった。彼のファンになって。
いちばんに伝えてくれた言葉が「ありがとう」
シンプルだけど、だからこそ伝わってくる、きみのやさしさ。

 


良かった。

 

 

混み合ってくる車内に紛れて、少し泣いた。


(2016.8.3のなにわぶ誌を読んで。)