BGMと音で振り返る「MORSE-モールス-」

  先日、MORSE東京千穐楽公演ぶりにグローブ座に足を踏み入れたら、あの時の気持ちが溢れて止まらなくなりiTunesに入っている自作した【プレイリスト:MORSE】を再生しました。BGMや音と一緒に舞台「MORSE-モールス-」を振り返ってみたいと思います。

 

 

<フクロウの鳴き声・吹き付ける風の音>

開演前の会場内に流れていた音。とにかく、静かだった。開演前にグローブ座のお姉さんが「本舞台は大変静かな舞台となっております。」って言っていたのがすごく印象に残ってる。


 
<電車の走行音>

日常で一番よく耳にする音。グローブ座を出て新大久保駅方面に向かうのに、わたしはいつも商店街側に行くのではなく左に曲がり高架下を通っていくのですがこの高架下で聞く音が一番MORSEを思い出す。グローブ座に近いし、いろいろと思い出すからそう感じるだけかもしれない。

 


<Oscar in Love> 

Oscar In Love

Oscar In Love

  • Johan Soderqvist
  • サウンドトラック
  • ¥150

オスカーが上半身裸、パンツ一枚でモールス信号を叩いたあと、ヒステリックなママはオスカーを探し叫ぶ。頭を抱え蹲るオスカー。一瞬の暗転とカミテから出てくるホーカン、そして木の箱に入ったエリ。ここでこのOscar in Loveが流れはじめる。開幕したころはホーカンがエリの腕をガシッと掴みゆっくり歩いていったのだけれど、中盤からゆっくり手を差し伸べて、それにエリが添えて目で何かを合図してから歩いていくようになった。それから、まだこの小さなブラッケベリという町で何が起こるかなんて知らずに雪で遊ぶ少年2人と家路を急ぐ男性、ドラムスティックでリズムを取りながら歩くロッカー風の男。Oscar in Loveを聞くと最初のこの光景が思い浮ぶ。

 


<ロッカールームの電気が付く音>

スイッチを押してから部屋が明るくなるまでに時間がかかるのであろう、ブオーーーンっていう音。オスカーはカミテから辺りを伺いながらも、何かを気にするように、急いで出てくるけれど、やっぱりヨンニとミッケに見つかってしまった。慌ててロッカーの中にに逃げ込んだけれど、これもまた見つかって強く叩きつけられてしまう。



<お菓子屋さんのベル>

入るとチリンチリンと鳴るベル。無精髭を生やして、眠そうにレジに立つおじさん。やわらかくしゃべる。オスカーのことを気にかけてくれる。

「おい、坊主。……夜道には気をつけな。」

「うん、気をつけるよ。」



<時計の音>

主に時計の音が鳴っているのはオスカーとママとのシーン。最初はゆっくり刻まれていくその音が、最後のシーンでは強くまるで全力疾走したあとの止まない・言うことの聞かない鼓動のように鳴り響く。オスカーを取り巻く環境の急激な変化や、オスカーの考え・成長、タイムリミットを表すかのように。

 

 


<...And Then You Wake Up>

... And Then You Wake Up

... And Then You Wake Up

  • Víctor Reyes
  • サウンドトラック
  • ¥150

エリにモールス信号を教えたオスカー。オスカーの家とエリの家の距離は壁一枚。ふたりは信号で会話をする。

「エリ」「オスカー」「そと」「いまいく」

外で待ち合わせをしたオスカーとエリが、お互いを見つけて、光が一本、ふたりを結びつけるのがとてもとてもすきだった。エリがオスカーをリードして木の間をくぐりぬけたり、走り抜けるんだけど、一瞬オスカーがエリを見失って。後ろからエリがオスカーの肩を叩いていたずらっぽく笑うのと、安心した顔するオスカー。戸惑いながら左手を伸ばしてエリと手をつなぐ。甘酸っぱくてすごくすごく不器用で。すきだった。

 

 

<Adagio in D Minor>

硝酸をかけてホーカンが自殺しようとするところを目の当たりにしてしまい、ベッドの上、三角座りをして苦しむオスカー。「今日イヤなものを見たんだ。その時思ったんだ。君がそばにいてくれたらって。エリ、僕と付き合ってくれる?」オスカーにとって付き合うとは「僕といっしょにいてくれるかってことだよ。」特別なこともしない。男でも女でも大人でも子供でもない・何者でもない・自分は自分でしかない、そんなエリと付き合えることになったオスカー。ひとつのベッドの中、ふたりは眠ろうとする。

「オスカー今日は臭う?」
「どうでもいいよ、きみのにおいがする。」
「、うん。」 → <Oscar in Love>

一幕おわり。

 


<Adagio in D Minor>
二幕のはじまり。ホーカンが入院する病院にくるエリ。いつかは死が訪れる人間と一生それが訪れない「アレ」。二人の別れ。

 


<The Arrival>

The Arrival

The Arrival

  • Johan Soderqvist
  • サウンドトラック
  • ¥150

くすんだ赤を全身に身に纏ったママが出かけていく。寒そうに手をこすりながら、オスカーがいるはずの家を見上げて。オスカーはフェルトで出来た手作りの王冠を被り、グレーのブランケットをマントのように体に巻き付け、ママの様子を伺いながら出てくる。剣と称したナイフを持って。

「僕はナイトなんだ」
「そのナイトは暴力がきらい?」
「うん、そして君は僕のガールフレンドだ!…ガールフレンドでいい?」
「いいよ。」
「いや違う、美しき乙女だ!…乙女でいい?」
「もうお姫様でもなんでもいいよ。」

 


<La Mer>

La Mer

La Mer

エリの家に訪れたオスカー。突然「踊ってくれる?」と誘われて、エリが流したレコードの曲が<La Mer>。

「この曲すき?」
「うん、どんな曲なの?」
「素敵なことを歌う」

不器用に踊るオスカーがすごくかわいい。そしてふたりが初めてキスする。最後、エリが眠る木の箱に寄りかかって指で唇をゆっくりなぞるオスカーがたまらなく愛しい。

 

 

<Von>

Von (Live)

Von (Live)

 「オスカー、約束して。光を入れて、正しい世界を生きる。」

オスカーとエリのお別れのときの曲。目の前が真っ暗になったオスカー。涙をぼろぼろと流して左手で右腕を擦り、やがて両腕を摩りながら歩く。寒い。孤独。突然明るいが光が差してオスカーの目の前に光を灯すけれど、ママもパパもエリもお菓子屋のおじさんも、みんなみんないなくなってしまったのを改めて痛感させるだけだった。

 

 

<プールに水が溜まる音>

大きな水槽に水がどんどん溜まっていく。なんて表現すればいいのか、わたしはあの一か月この音が怖くて仕方なかった。結末はわかっているのにオスカーが助からないんじゃないかって怖くて怖くて。いじめっこにも挨拶を欠かさないオスカー。プールに入る前のオスカーの顔とか、入ってからの何かを覚悟したような顔とか、怖くて仕方なかった。苦しかった、ほんとうに、おつかれさま。

 

 

<La Mer>

La mer

La mer

 オスカーをエリが助けにきてくれたときに流れるもうひとつの<La Mer>。カテコのあとに会場に流れるのもこちらのほう。

 

 

「来てくれてありがとう。」

「入れてくれてありがとう。」

 

 


<Then We  Are Together> 

Then We Are Together

Then We Are Together

  • Johan Soderqvist
  • サウンドトラック
  • ¥150

エリがタオルを差し出して背伸びをして頭をわしゃわしゃ拭いてあげるのがすごくすきだった。オスカーは服のにおいを嗅いでいたけどどんなにおいがしたんだろう。ゆっくり、エリはまた木の箱に入って、ふたりは列車に乗って旅立っていく。誰も知らない次の町へ。ふたりしか知らない覚悟を持って。

 

 

ああ、MORSE、また観たいなあ。薄れていく記憶をどうにかして、少しでも残しておきたくて。当時の雑誌とこの音たちは大切な宝物だよ。「バイバイ」したけど、これからも時々思い返すことを、許してね。